喫茶店で私と夫のコーヒーについてきた豆菓子を
何の気なしに息子へあげてたら、
ぱくぱく食べてたのに途中で手が止まった。
「もういいの?」
「いんない」
その1時間後、家で盛大に吐いた。
息子の異変にまったく気づけなかった。
情けない程まったく。
吐く直前も、マンションの下で会ってそのまま遊びにきていたS家のAちゃんに絵本を読んでたら、息子はソファでごろんと横になりだして眠くなったのかな、と呑気に思っていた。
キッチンでじゃがいもを茹でている夫に
「眠そー、考えてみたらお昼寝あんまりしてないもんね」
と伝え、夫が寝室で寝かそうと抱っこしたら、
吐いた。
二段階で胃の中のもの全部でた。
乳児期にもあまり吐かないタイプだったので、ぐったりしている顔からマーライオン状態ででてきた絵面にぜんぜん慣れてないわたしは
夫に言われるがままタオルを渡したりして、Aちゃんの手前ぎり冷静さを保った。
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考えてみたら、気づくべきサインはいっぱいあった。
喫茶店では飲み込みにくそうにしていたし、手を止めてからは耳のまわりを強く掻く仕草をしていた。
顔も掻いていたし、涙もでていた。
急に体を反って落ち着きをなくした息子を横目にわたしたちはコーヒーのおかわりを注文していた。
別のおやつにもほとんど手をつけないし、なかなか機嫌が治らない。
もう帰ろう、と仕方なく喫茶店を出たのだった。
わがまま言ってたわけじゃなかったのだ。
ぐずっていたんじゃなかったのだ。
ずっと気持ち悪かったんだ。
コミュニケーションが随分とれるようになってきたとはいえまだ1歳。体調の変化を伝えられるわけもなく、こっちが勝手に育児慣れしてサインをぜんぶ見逃していた。
食べ物のアレルギーもこの子は無さそう、とどこかで思っていた。
今までなかった、から。
安易な過信。
寝顔に何度もあやまって、
手を繋いで寝た。