あの頃の僕たちの話しをしよう

つわりがピークに達していた10週〜15週くらいだったと思う。

嗅覚が犬並みに【覚醒】していた。

 

一服休憩から上司が戻ってきた社内、地獄。

収集日前のキッチンのゴミ箱、地獄。

電車の人混みの匂い、地獄。

香水、殺意。

 

そして、

夫の口臭、悲しみ。

 

 

愛する夫に近ずこうものなら、ウヴヴヴ...ッ!

ご、ごめん、と言ってシンプルに距離をとる日々。

一緒に出掛けているときは、自然な動作のなかでハンカチをそっと口に当て、

ソファで一緒にくつろいでいるときには、冷房避けとしてかけていたタオルケットをさりげなく口元まで上げて会話を続けた。

 

それでも、時折そんな私をみかねて

「....臭い?」と聞いてくる夫。

 

私「......うん.........臭い(涙)」

 

夫「......ごめん」

 

もう誰が悪いというのだろうか。

夫にこんな悲しい顔をさせてしまって、私も苦しい。

 

それでも当時の私は、自分の嗅覚レヴェルが尋常じゃないことを忘れて、【夫の口が尋常じゃなく臭くなってしまった】と思い込んでいた。

ゆえに悲劇はまだつづく。

 

こんなに口が臭くて、職場でも迷惑をかけているに違いない....!

>> 女子社員に指示をしながらも距離をとられている絵が浮かぶ。

 

ちょこちょこ転職活動とかしてるけど、その口臭で受かるわけない....!

>>面接官がハンカチで口元を抑えている絵が浮かぶ。

 

いや、そもそも電車でもめっちゃ避けられてるのでは..!?

>>混んだ車両で夫の周りだけ人がいない絵が浮かぶ。

 

スースー寝ている夫の寝息にヴヴヴッ....となりながら

わたしは夜な夜な隣で頭を抱えた。

本人がそんなに問題だと思ってないことが問題だ。

彼のために、妻である私が言わなければ。

 

 

意を決して伝えた。

いかに臭いかを。

 

「あと.....たぶん虫歯とかそういう口臭じゃないと思う。...胃とか内臓からくるものだと思うから一度病院にいって診てもらった方がいいと思う」

とネットを調べ上げて、決めつけた情報まで付け加えることも忘れなかった。

 

静かに携帯を取り出した夫。

 

「.......とりあえず歯医者に行ってみる」

 

「うん」

 

 

---

 

それからどれくらい経っただろう。

 

いつの間にか、わたしの嗅覚は覚醒を止めていた。

 

夫は全然臭くなくなった。

 

 

 

全妊婦に告ぐ。

 

忘れないでほしい、

自分の嗅覚がまず尋常じゃなくなっていることを。

 

ーー何度も言うよ。

あなたの嗅覚をまず疑って。

 

 

アーメン。

 

アイラブユ

 

f:id:suratanmen:20191128233718j:plain昨夜、歯磨きをしながら思い立って撮ってみた我が家のマタニティフォト。2人と見せかけて2.5人。