130円で3本にカットしてある洗いごぼうと、
90円の泥付き1本丸々ごぼうで迷った。
外は雨de強風。
ぴょーーーんと袋から飛び出したごぼうに集中力を削がれる帰り道と、狭い台所で真っ黒い泥を落とす手間を考えたら【40円】の差とはなんぞや.... となったが、その一瞬にしてすでに考えることが面倒になり、先にかごに入れていた90円のロングごぼうをそのままにしてレジに向かった。
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昔、たぶん小学生の頃だったと思う。
父方の祖母と二人でスーパーで買い物をして、袋詰めを手伝ったことがあった。
さして祖母に可愛いがられた記憶もない...というと語弊があるが、父の実家は超がつくほどの亭主関白おじいちゃん(祖父)で、祖母はとにかく静かで、余計なことは言わず、子供を子供扱いすることなく必要以上の笑顔も作らず、幼いながらにも無邪気に駆け寄れない雰囲気を感じていた存在だった。
そんな祖母と、三姉妹末っ子のわたしという二人だけでなぜ買い物へいくことになったのか?その経緯は全く覚えていないが、後にも先にもその一度きりだったことは確かだ。
淡紫色の上品な上着をまとった祖母と、制服のわたし。
そして記憶は、袋詰めのシーンにワープする。
オレンジ色の買い物カゴから
一本の太いごぼうを手に取った祖母。
片足を静かに上げたかと思うと、
次の瞬間、キッとした勇ましい顔で
膝にごぼうを押し当てて、
バキっ、バキっと二回へし折った。
そして、私が抑えていた袋にズボっ!と突っ込んで
何事もなかったかのようにすっと歩き出した。
−− 記憶はそこで閉じる。
ごぼうを躊躇なくへし折る祖母の顔がめちゃくちゃ怖かったこと。
その顔が忘れられなくて、しばらく祖母の家に行きたくなかったこと。
このことを母にもすぐに言えなくて、のちに話したら爆笑していたこと。
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そんな記憶が、今日ごぼうをへし折った瞬間に蘇った。
折るよね〜〜
と天国の祖母に言ってみる。
今夜は筑前煮。
一方、熟年離婚をはたしレリゴーな人生を謳歌している母方の祖母(93)。一番近くで面倒をみてくれている長男の嫁に不満があるらしく「あの嫁は、むかしスイカを切ったときに自分が真ん中を取って旦那に端っこを食べさせてた」と、この前言ってきた。いつの話しやねん。戦後の女は溜め込みがち。