5月1日 不妊治療クリニック卒業

朝からテレビ各局が新天皇即位の儀を生中継するお祝いムード一色のなか、「よし」と小さく言ってテレビを消して、旦那と家を出た。

 

ゴールデンウィーク半ば、街はいつもより静かで歩く人も少ない。みんな何して過ごしてるんだろう。そんなことを思いながら活気のない景色を車窓からぼーっとみてるとバスはすぐに三茶へ着いた。

クリニックは座る場所もない程混雑していた。

世間が新時代の幕開けにどれだけ浮かれていようと、ここでは淡々と治療が繰り返されるまったくの平常運転で、ある種別世界なんだよなーと誰に言うでもない独り言が頭を流れる。

この世界との行き来も、今日で終わる予定だ。

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エコーでの心拍確認。

ドクドクドク....と小さな点が動いているのを、先生がカーテンをめくって私にも見せてくれた。

姉や友人からは「感動するよ〜」と言われていた瞬間だったが、よかった、、、という安堵の方がずっと大きくて感動までは届かなかった。それでも最後に、紹介状を出してもらって旦那と並んで、先生とがっしり握手をした瞬間にはさすがに目にきた。

 

とりあえず1年間と決めて取り組んだ我が家の不妊治療。昨年の6月から検査を始めて、図らずもちょうど一年で卒業となった。

 

実際にかかった費用

4回の人工授精と1回の体外受精、実際いくらかかったのか計算してみた。

  • とくおかレディースクリニック 
    初診検査一通り、人工授精3回 <23万>
  • 峰レディースクリニック
    初診検査のみ <2万>
  • 三軒茶屋レディースクリニック
    人工授精1回、採卵2回、培養&凍結2つ/1回、移植1回 <70万>
  • 伊藤病院
    甲状腺治療5ヶ月分 <2万円>

合計  97万円

これだけ払ってクレカも使えずポイントも無しってそんな殺生な〜、って思う一方で、この高額課金を経て、わたし自身【お金との付き合い方】が少し変わったような気がしている。毎回2万とか3万とか、時には18万とか現金で支払ってると、高いぃーヒィーーってなりながらもどこか一部が麻痺してきて、お金の価値ってなんだっけ?みたいな根本的なことを揺さぶられる日々だった。

なにが特殊って、我が家はおよそ100万の課金で1回の妊娠を手に入れたのだけど、そんなのあくまで結果論だ。普通は払った額に対して何かしらの対価や結果を保証されてるが、この世界ではそんなの一切通用しない。この前、英国の不妊治療クリニックが「Trading of Hope」として告発された記事を読んだが、まさにそうで結果にコミットしない限り、不妊治療はどこまでも希望の搾取が続くブラックボックスなのだ。

しかも、それが妊娠というある種神秘へと続いているからたちが悪い。病院からは「卵の質が...」「年齢的に...」そんな定型文を差し出されて受け取るしかないのは日本だけではないみたいだ。

この言葉を使うのはあまり好きではないけれど、、、これだけは、この気持ちのやり場のなさだけは、本当に経験しないとわからない特殊な状況だと思うのだ。

それでも、へんな持論で、お金は使った分だけ社会との接点が多い=学びが多いと思ってるところがあって、車も家も買ってない我が家ではこの97万という特殊な支出から得た学びもきっと大きいんじゃないかと思う。

そう信じさせてくれい。せめて。

 

背中を押してもらった言葉

治療期間中、精神的に一番まいってたのがこの時期だったと思う。

 

3度の人工授精で結果が出ず、あぁ私はマジの不妊か、、と思いながらも、金額の大きさや体外受精への漠然とした怖さが先走って、ステップアップを覚悟できずにいた時。

 

ツイッターでDMを貰った。

 

ぽてこさん、AIH3回目?お疲れ様でした。お節介かと思いながらもメッセージさせていただきます。
私も4回目のAIH後が...(中略)....

今思い返せば本当に心が病んでいたんだなぁと思います。

それから半年経って、体外に進んだわけですが、心も元気になっていたので、前向きに治療できています。
私は仕事をゆるくやっている立場なので、仕事の面での大変さは全然違うかとおもうのですが、体外に関してはひとつづつ、壁をクリアしていくことになるので、人工授精より、私は自分に合っていると感じています。問題が出たら、その都度解決していく…というのが、ただ繰り返すだけの治療ではないのがいいのかもしれません。

もし、体外に進む上で、アドバイスできるようなことがあったら、聞いてくださいね!妊娠していないので、信憑性に欠けますが…

まずは、ぽてこさんの心が回復しますように!!

 

手術や大病を経験したことのない私にとって、体外受精=恐怖だったが、このメッセージでなるほど...そんな考え方もあるのか、、とまさに目から鱗だった。

 

「ひとつづつ壁をクリアしていく体外受精の方が、ただ繰り返すだけのAIHより自分には合ってる」

 

やってみよう、と思った。

漠然と怖がってても何も進まない。こうやってみんな一つ一つ進んでるんだと思った。

 

そこからは、本当に何とかなった。

痛いのも苦手だけど、一旦レールに乗ってしまえばもうやるしかない。

それにやっぱり理解が追いつくと、不安も減っていった。

 

何事も飛び込む前が一番恐怖だ。

もし、同じく小心者で、同じような段階で立ち止まってる人がいたら、届くものがあるかもしれない、、と思って最後に記しておく。

 

#不妊治療編おわり(仮)

f:id:suratanmen:20190505130844j:image GW初日に晴天の中、友人家族と行った公園にて。