「このミス 海外編」今年の1位は『カササギ殺人事件』だったのだけど、個人的にはもっと他になかっただろうか、と思っている。〝巨匠アガサ・クリスティへの愛に満ちた完璧なオマージュミステリー!〟という謳い文句にまんまとつられて上下巻を購入したが、頼む...どこかで面白くなってくれ....と思いながら最後まで読んだ。
読後、「役に立った」ボタンを100回くらい押したいレビューがあったので、それを転載しておく。
赤だぬきさん、に禿同なんですけど。とにかく登場人物がぜんぜん描けていないのだ。これでクリスティへのオマージュとは笑わせる。...謎解き以前に小説として本当に退屈だった。でも、当然賞賛の声も多いのだから、わたしにはフィットしなかっただけなのだろう。
そーーこーーでーーー!だ。
これをきっかけに、私的「このミス大賞」を布団の中で考えてみた。そしたら一人遊びとして楽しかった&およそ1週間の再考を重ねた結果、相当良いセレクションが完成したので発表してみようと思う。
何年とかいう括りもなく、MY読書人生を総括した「このミステリーがすごい!」10選。すなわちオールタイム・ベスト・ミステリー。
玄人感やツウっぽさも出したい気持ちをぐっと飲み込んで、「面白い」純度100%で選んだため、かなりの作品が映像化されてて既に有名というオチは先にお伝えしておかなければならない(笑)
それでも、もし知らない作品があったら、ぜひ手にとって見て欲しいと思う。
そして、こんなランキングを張り切って発表することを許して欲しい。
コイツには読書友達がいない。
私史上最強の「このミステリーがすごい!」10選
- 長編(文庫だと上下巻以上になる)を3つ
- NOT長編(文庫1冊で終わる)を7つ
- ネタバレ一切なし
- ソロモンの偽証 宮部みゆき
- ミレニアム1〜5 スティーグ・ラーソン
- OUT 桐野夏生
- 第三の時効 横山秀夫
- 十角館の殺人 綾辻行人
- 白夜行 東野圭吾
- 長い腕 川崎草志
- 凍える牙 乃南アサ
- ナオミとカナコ 奥田英朗
- モンローが死んだ日 小池真理子
まずは、長編から!
ソロモンの偽証 宮部みゆき
中学生は子供じゃない度 ★★★
どっぷりハマってしまう度 ★★★
持ち運び不便度 ★★☆
日本のミステリー女王・宮部みゆき。模倣犯も迷ったがこっちを。最近はミステリーという切り口だけではくくれない複雑なテーマのものも多いが、これは、すごく〝宮部らしい〟作品。なんといっても、文庫で6冊という長編を一気に読ませてしまう筆力は圧巻。相変わらず、言葉えらびが精確で、丁寧で、さまざまな登場人物の描写のなかに、今まで味わったことあるけどぼんやりしていた感情や事柄を、作者の言葉により気づかされる心地よさが何度もあった。この辺りはやはり映像化では味わえない本のおもしろさだと思う。
迫力のあるシーンが続く後半だが、最後まで〝宮部らしい〟あたたかな目線で描かれていて、購読感はじつにキヨキヨ、あ、清々しい。
『悲嘆の門』『過ぎ去りし王国の城』にも言えるが、子供を子供として描かない洞察力の深さに宮部みゆきの天才たる所以が隠れているような気がする。中でも、これは間違いなく傑作。
一つ難点をあげるとすれば、文庫6冊という長さながらkindle版がないこと。
頑張ろう、持ち運び。
ミレニアム1〜5 スティーグ・ラーソン
ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女(上・下合本版) (ハヤカワ・ミステリ文庫)
- 作者: スティーグ・ラーソン,ヘレンハルメ美穂,岩澤雅利
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2012/08/01
- メディア: Kindle版
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ハードボイル度 ★★★
スウェーデン人の名前が全然入ってこない度 ★★★
エンタメ度 ★★★ x100
この言葉だけは出すまい、出すまいとレビューしてきたが、すまん、言う。「え、これ読んでないとか、人生半分損してるよ?!ワラ」
このシリーズは本当にハマりすぎて、人生初オフ会への参加に興味をもった。まだ読んでないとしたら、今からこれを楽しめることが率直に羨ましい。
映画も話題になったので、知ってる人は多いだろう。でも、ビジュアルやその他の要因から、もし食わず嫌いしてる人がいたら強くオススメしたい。ただ、スウェーデン語の名前が全然入ってこないので、そこだけは挫けずに読み進めて欲しい。因みに、主人公の名前はミカエル・ブルムクヴィスト、弁護士のホルゲル ・パルムグレン、警察官の下っ端イェルケル ・ホルムベリ、と強敵はこの辺りだ。
ただ、こんな事がどうでも良い程の面白さが待っているから大丈夫!なんといっても、もう一人の女主人公(ドラゴンタトゥーの女)がめちゃくちゃカッコいいのだ。IQの高い天才で、超強くて、非常識。世間の常識を蹴散らして、自分の正義のみを貫く姿がとにかくクールで、女が惚れる女。いや、男も惚れる女。
魅力的なキャラクター、スピード感、ストーリー展開。これぞ世界を魅了した一級品のエンタメという感じ。
ダニエル・クレイグ主演の映画版も素晴らしくて両方観る価値あり。
OUT 桐野夏生
色々エグってくる度 ★★★
鬱蒼、ドキドキ、ハラハラ度 ★★★
リアリティすごくて怖いんだけ度 ★★★
〝普通の〟主婦たちがひょんな事から犯罪に手を染めていく怒涛のクライムサスペンス。文庫だと上下巻、単行本だと1冊だから長編といっても先の2作品に比べれば手に取りやすい。桐野夏生を読んだ事がある人にはわかると思うが、もうね、、、えぐるえぐる。平凡な日常への閉塞感、女同士の嫉妬、飽くなき欲望、秘めたる狂気。つまるところ、桐野夏生あるある「地味にみえる女こそ、一番やばい」が極まっている。
そうした闇をとことんえぐりながら、4人の主婦を圧倒的なリアリティーで描ききっていてマジで怖い。どんどん狂っていく女たちから目が離せない。
一気読み必至、強烈な余韻を残す作品です。生々しい描写が多く、そこは好みが分かれるかも。
ここからは、NOT長編 7作。
第三の時効 横山秀夫
警察官になりたいんだけ度 ★★★
全話秀逸なんだけ度 ★★★
だれに薦めても大丈夫度 ★★★
64(ロクヨン)や半落ちもいいが、一番面白い横山秀夫作品は?と聞かれれば迷わずこれを差し出す。
じつはコレ短編が6本入っている。そして、その全話がほんとに秀逸で、驚愕の面白さなのだ。ロクヨンだってバケモノ級の傑作だが、そのロクヨンを抑えて、横山秀夫ファンのわたしが挙げた一冊であるという事実からもう信じてほしい。補足でもっと強いやつを言うと、アマゾン157件のレビューが付いていて4.3。これは食べログの4.3にも値するレベルだ(私調べ)。
読書友達ゼロと言ったが、まれに友人からおすすめ本を聞かれることがあって、そういう時には大体これを差し出してきた。短編だから普段そんなに読まない人も入りやすいし、警察小説だし、新幹線や飛行機などのちょっとした移動時間にもってこいだし。
短編のうまい作家は本物だ、ってね。
十角館の殺人 綾辻行人
これ!これ!謎解きミステリー度 ★★★
何も考えずに楽しめる度 ★★★
ゴクリ... これが綾辻か度 ★★☆
クラシックなエンタメミステリーとして、楽しむ余地しかない。アガサ・クリスティー『そして誰もいなくなった』へのオマージュとして描かれている本作。1987年刊行だからその時代の古臭さはあるが、ぜんぜん嫌じゃない。これをツマラナイと判断するならば、綾辻作品をこれ以上追う必要はないし、これを面白いと判断するならば読むべき作品は一気に増える。東野圭吾の仮面山荘殺人事件が好きな人は、これもきっと好きだと思う。
白夜行 東野圭吾
傑作ゆえに有名なのだ度 ★★★
ベストオブ東野圭吾度 ★★☆
ドラマも超良くないですか度 ★★★ x 50
もう私が語らずとも...という傑作だ。心が震える読書体験をしたければ、ぜひ。あと、私が圭吾を讃えているこちらの記事もぜひ。
『白夜行』に関しては山田孝之と綾瀬はるか主演のドラマ版についても言及するパッションを持っている。あの脚本は、とんでもない。小説に描かれていない部分を補完する視点が入ってて、めちゃくちゃ良くできている。武田鉄矢の熱演もドンミスイット。
長い腕 川崎草志
ヒャダ怖い!!度 ★★★
怖い!!面白い!!!度 ★★★
貴志祐介『黒い家』とかぶる度 ★★☆
震える、ではなく「慄える」方のホラーミステリー。今なら、kindle unlimited 0円で読める。ミステリーでは私にとってレアだが、3回以上読み直している。もう何も考えたくない!というとき、イージーに没頭できるのが良い。とにかく読みやすくて、ゾクゾクして、面白い。主人公が身を置くゲーム業界の描写も興味深い。横溝正史ミステリ大賞受賞作だって。貴志祐介が好きだったら、コレもきっと好きだと思う。
凍える牙 乃南アサ
ハードボイル度 ★★☆
幻想的で心に残る度 ★★★
このシリーズ全部おすすめ度 ★★★
乃南アサにハマったきっかけがこの『凍える牙』だった。読み返したのも昔すぎてディティールを忘れたが、面白かったなぁぁという記憶が強烈に残っている一冊。私がぼんやり書くより100倍的確なレビューがあったのでこちらをどうぞ。
ナオミとカナコ 奥田英朗
最初から最後まで面白い度 ★★★
エンタメ度 ★★★
中国人への理解が深まる度 ★★★
最初から最後まですごいスピード感でずっと面白い。重いテーマや小難しい内容を避けて、何も考えずに没頭したいなーって気分だったらピッタリだと思う。
奥田英朗の人物描写は、深いところに切り込みながらもどこかユーモラスで、愛があって、楽しい。中でも、これに出てくる中国人女社長「李朱美」が最高で、味方にするとこんな心強い人種いないかもしれない、という気になってくる。日本人にはなかなか備えられない図太さ、肝のすわり方、生きるための鋭角な考え方。そんな朱美に影響を受け、どんどん逞しくなっていく主人公にもつい感情移入してしまう。
中国人社長の役、ドラマでは高畑淳子が演じててそれもすごく良かった。奥田英朗小説の登場人物で一番好きかも。次は伊良部(イン・ザ・プール)。
モンローが死んだ日 小池真理子
感覚が言語化される悦び度 ★★★
【超一級】恋愛ミステリー度 ★★★ x 50
小池真理子の1冊目としておすすめ ★★☆
これを初読したときの日記には「人気作家ってもれなく文章が上手いんだなぁ」と当たり前の感想が書いてあった。柔らかいのに鋭くて、読みやすくて、情景が目に浮かぶ。
『モンローが死んだ日』は、孤独をテーマにした恋愛小説的にはじまるが、中盤から一気にミステリーへと変貌する。構成もきちんと考えられていて、続きがどんどん気になる&一気読み必至。ミステリーとしても、恋愛小説としても間違いなく一級品だ。
あと、情景描写が天才的にうまい小池真理子のホラーはまじで怖くて夜読めない。ホラーが上手い作家は本物だってね。聞いたことないけど。小池真理子は『恋』『冬の伽藍』初期のものが有名だけど、コレから入るのを強くおすすめしたい。
以上
私史上最強の「このミステリーがすごい!」 10選 〜オールタイム・ベスト〜 でした。
だれかの読書欲に火をつけれたら嬉しい。あと、コレも面白いよ!とか、あー僕私だったらこっちだなー!とかあったら教えて欲しい。
...セイアゲイン。
コイツには読書友達がいない。
引越し....今は95%Kindleで買ってるけど捨てられないのも結構溜まる。
#ぼっち #読書 #このミス #オールタイムベスト