診察室の前で、くっくっっくっ....と肩を揺らしていたら「〇〇さんどうぞ〜」と名前を呼ばれ、ハンカチで涙を拭って立ち上がった。
活字を読んで、本当に文字通り声を出して笑ったのは、雑誌『ブルータス 漫才特集』のサンドウィッチマンのピザ屋のネタ文字起こしを読んで以来じゃないかと思う。
岸本佐知子、おそるべし。
こんなかわいらしい表紙をつけやがって!と思ったが、読み終えた今、じわじわ怖さも湧いてきている。まじ卍。狂気。抱腹絶倒。
この人が社会人やってたのなら、私はけっこう大丈夫じゃないかと思う。
翻訳家である著者のことは知ってたけど、このエッセイは、2年くらい「ほしいものリスト」に入れっぱだった。なぜなら、Amazonのレビューにならぶ「妄想」「奇想天外」「強烈なユーモア」などなどのワードで、得意の〝大体わかった〟を発動していたからだ。まー面白いんだろうけど、よく知らない人の妄想話しかぁーと思うといざ手が伸びなかった。
いいから、早く買って読め。2年前の私よ。
なんでこんな面白い本を、だれも教えてくれなかったんだろう。と思ったが、みうらじゅん、はたまたバカリズムくらいメジャーじゃないと、読書仲間皆無のわたしには届いてこないのだろう、とすぐに答えがでた。
今更いうが、岸本まじ半端ないって。
たとえば「◯ップヌードルはおかげさまで二十周年」といったクイズ付き広告があったとする。締切日がすぎてしばらくすると、応募総数354894通中、正解353829通の中から厳正なる審査の結果.....というような告知が出る。この場合、どうしても気になるのは不正解となった1065名の人々のことである。このうち、まぁ半分くらいは住所・氏名を書き忘れたとか、字が極度に汚かったとか、いわば凡ミスであろうと思われる。しかし、残りの500名ほどは、おそらく絶対の自信をもって「ラ」「モ」「ヘ」などといった文字を書き記したのである。
こちら側に思考が飛んでしまうのが、岸本佐知子である。そして、ここからの飛びっぷりが見事で、力んでない淡々とした文章もまた良くて。
一生のうちに(こんな機会は多分絶対ないけれど)もし友人宅のトイレ文庫を任されることになったら、是が非でも忍ばせたい一冊だ。しかも、事前に面白いですよ〜という雰囲気は出さずに、気づいて連絡がくるのを待ちたい。
なぜ正面きってすすめないかというと、これを面白いと思ってもらえなかったときの悲しみがそのまま友人との距離になってしまいそう。あるいは、こいつヤバイなと向こうから距離を置かれてしまいそうだからです。
ちなみに、わたしが一番好きなのは「国際きのこ会館の思ひ出」です。
また読者が一人遠のいた気がしないでもないが、騙されたと思ってぜひ手にとってもらいたい。
大変なことに、あと3冊もエッセイを出しているらしいので、週末の予定は決まったも同然だ。あとはRIZINくらい。チャーミーの襲来に備えて買いに行く。
#岸本佐知子 #読書メモ
追記:日記として読んだものを全部書き残して行こうと思っていたのに、全然追いついてない。というか、やっぱりおもしろかったもの(自分にとっての引っ掛かりが大きかったもの)を記録しときたいから、高得点レビューしか結局書かないという矛盾に今更気づいた。以下は最近読んだもの。#記録
- 作者: 姫野カオルコ
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