『もものかんづめ』『さるのこしかけ』さくらももこ ★★★★☆ 4.6

さくらももこを代表する2冊のエッセイ。

小学生の頃に大ブームを巻き起こし、家にもあったし、図書館でも借りて読んだ記憶がある。タイトルも、表紙のイラストもすっかり覚えていた。

もものかんづめ (集英社文庫)

もものかんづめ (集英社文庫)

 
さるのこしかけ (集英社文庫)

さるのこしかけ (集英社文庫)

 

いま読んでも楽しめるだろうか。『もものかんづめ』の初版が91年だから、28年前の作品ということになる。その頃なんて、ランドセルを背負って『ときめきトゥナイト』の蘭世と真壁くんに夢中になっていた時代だ。

はたして、

再読したさくらももこは、バケモノだった。今読んでも、というか、今読んでこそめちゃくちゃ面白い。むしろ、こんな上質な文章、小学生のわたしによく理解できたなと思う。

自分のことを誰よりも客観的にみつめて極上の「くだらない」を抽出する。人間とはいかに愚かで愛おしい生き物か、彼女の目線を通した世界は、ホワホワと柔らかくて、心地良くて、くだらなくて、考えさせられる。

わたしのイチオシ4選はこちら。

 

もものかんづめ:恐怖との直面

友だちと行ったNYで、コカインを吸ってるタクシー運転手に「ヒャッホー」と叫びながらハーレムに連れて行かれた話し。腹がよじれる。

 

もものかんづめ:メルヘン翁

友蔵のモデルになった祖父が死んだ日のこと。さくらももこ曰く「ズルくて、イジワルで怠け者で、ろくでもないジジイ」だったそう。死に顔に爆笑するももこと姉。このエッセイ発売後、不謹慎だ!とクレームがたくさん来たらしいが、それに対しての意見を後半で述べていて、それがまた素晴らしい。さくらももこという人物が、私の中で一番浮き彫りになったのは家族について語っているこの部分だったな。

〝身内だから〟とか〝血が繋がってるから〟という事だけで愛情まで自動的に成立するかというと、全くそんなことはない。かえって血のつながりというものが、わずらわしい事である方が多いとすら思う。

私は血のつながりよりも、接する事になったその人を、自分はどう感じるか、自分はその人を好きか嫌いか、ということから付き合いを始めている。私は両親が好きだ。姉も好きだ。血のつながり以前の基本的な想いである。(中略)

時折、「父のことが嫌いだ」とか「母のことが嫌いだ」という人がいるが、そういうことも充分ありうると思う。その人の人生はその人しかわからないし、その人の個人の考えに他人が介入する余地はない。

そんなわけで、私は爺さんのことが好きではなかった。

彼女の率直なこの言葉に救われる人は、今も昔もたくさんいるんじゃないだろうか。

 

さるのこしかけ:ポールマッカートニーに会う

あの時ポールにあったのは、一体なんだったのだろう、と振り返る爆笑エッセイ。夢のような時間から、奈落に突き落とされる夫婦二人の姿が目に浮かびすぎて死ぬ(笑)

 

さるのこしかけ:いさお君がいた日々

特殊学級にいたいさお君のことが気になって仕方なかったももこ。いさお君のゆるぎない存在感。明らかに自分たちに無い何かを彼は持っている。そして、その途方もなく大きな〝何か〟がなんだったか、最後にわかるのだけど、きっと誰しもにぐさっと刺さる答えで、読み終えても深く印象に残った。

 

さくらももこ

どんな事態に遭遇しても、笑いを忘れずその体験をあざやかに描ききる。それは漫画とも共通した才能だと思うが、話の展開、文章の上手さも見事で、作家になるために生まれてきた人だったんだなと思った。

今読んでも全然古くないのもすごいよなー。

 

最近の読書記録

おすすめはジョージ朝倉の『ダンス・ダンス・ダンスール』。風邪で寝込みながら1〜11巻まで購入してしまった..... 総額七千円。マンガ高い(涙)

カササギ殺人事件(上・下)』はひたすら長くて、ぜんぜん面白くなかったなぁ...。レビューは超高い。翻訳が合わなかったのかな。

カササギ殺人事件〈上〉 (創元推理文庫)

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カササギ殺人事件〈下〉 (創元推理文庫)

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物欲なき世界

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時をかける少女 (角川文庫)
 
物には心がある。

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 #読書 #12月