『聖の青春』★★★★☆

聖の青春 (講談社文庫)

聖の青春 (講談社文庫)

 

先週買った宮部みゆきの新刊『過ぎ去りし王国の城』と、姫野カオルコ彼女は頭が悪いから』の2冊を並行して読んでたが、なんか今の気分にフィットせず、長らくほしい物リストに入れてた『聖の青春』をポチった。

 

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150件のレビューで、4.8は相当高い。

どうせ絶対に面白いんだろうと読み出したら、案の定、週末に一気読みし、その余韻を引きずって今日、月曜日を過ごすことになってしまった。 

それほど余韻を残す一冊だった。

将棋のルールも知らない私がそうなのだから、知ってる人はもっと面白いに違いない。

 

戦争をテーマにした映画が苦手だ。
ミステリー小説は大好きだが、死生観をテーマにした小説は好んで手を出さない。理由は、観てて、読んでて「辛い&暗い」に尽きる。

でも、この小説は、文体がとにかく読み易いうえに、登場人物のキャラがみんな立っていて、拒否反応が出ることなくグッと入れた。

主人公である棋士村山聖(むらやまさとし)のことは漫画『3月のライオン』で少しだけ知っていたし、将棋という世界もそれで多少興味を持ったこともあったかもしれない。

私にとって良かった誤算は、「村山聖 vs 羽生善治」をテーマにした内容じゃなかったこと。

これは、村山聖と師匠である森棋士の話しだった。師弟という、ある意味において家族以上の不思議な関係が織りなす情景が切なくて切なくて。ただの師弟ではなく、この二人の場合、出会うべくして出会ったような運命の必然を感じてしまうし、実話であることから、ちょっと検索すれば出てくる写真にまた涙が止まらなくなってしまった。

そして、二人の繋がりの深さが色濃く描かれるほどに、将棋という、どこまでも一人で闘わねばならない底なしの孤独が胸に迫ってくる。 

スポーツ選手も、芸人もすごいって思うけど、棋士ってやっぱり格好いい。

いや、格好いいなんて軽すぎるし、凡人の自分が棋士として生きてみたかったとも思わないけど、将棋という宇宙を一度知ってしまったら、他の生き方を模索しようとも思わない「魔力」みたいなものがあるのだと思う。その魔力に取り憑かれてしまった人たちが棋士なのだと思う。

本書には、その宇宙をみている者同士にしか出来ない会話があって、空気があって、それがとにかくシビれるし格好いいのだ。

男女、といってしまうと今の時代だめなのかもしれないけど、こういう類のものを読むと、やっぱり男には男同士の世界があるんだろうなぁと思い知らされて、実はちょっと寂しいというか悔しいというか、惚れるというか、処理できない感情がモヤっと残る。

最近だと『孤狼の血』もそうだった。

きっと、わたしが女として永遠に体験できないから、そこに浪漫をみるんだろうなぁ。

  

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村山聖の色紙 - 森信雄の写真あれこれ

 

星4つと辛口なのは、これを基準にするという強い意思によるものです。コホンっ。

 

#村山聖  #森信雄