「そのうち良い人できるよー」
なにげなく放った一言が、
友人M子の溜め込んでいたものに着火した。
「でた!こういう話って、結局そうやって、うやむやにして終わるんですよ。そんな言葉が響くのは20代までなんですよ!今まで出来ないからこうなってるんじゃないですか!!!!30代には何の気休めにもなんないんですよ!!」
「所詮結婚してる人の言葉ですよ!!」とも。
思いがけず強い反応が返ってきた。
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M子は、わたしの数少ない友だちで、
もう10年以上の付き合いになる。
昔、アパレルショップで働いていた時、わたしの後輩として入ってきて2週間くらい一緒に仕事した。その期間はとても短かったけど、不思議とウマが合って、今に至っている。歳は2つ3つ下?で、いまだに敬語を使ってくる。
日本映画に詳しくて、以前はよく映画館にも一緒に行った。だいたい彼女のチョイスはマイナーで行くとガラ空きのことが多くて、「じゃ、わたし前で観てくるんで」とクールに私を置いてすーーっと席を立ち、最前列ど真ん中で観る、そんな子だ。
そういえば、エゴラッピンの野音ライブにも誘われて、二人で行ったのにビール片手に踊りながらぐんぐん前へ行ってしまい、ほぼ一人でライブを楽しんだことも思い出した。
そんな子だし、そんな関係だ。
頻繁に連絡を取り合うわけでもないけど、いつ会っても違和感なく時間を過ごせるし、必要以上に場の空気を読んでリアクションをとったり(できない)、周りに合わせたりしようとしない(できない)、いつもフラットで低体温なM子を信用していた。だから、他の人へわざわざ話そうと思わないしょうもない話題もM子になら自然と話せた。
冷めてるように見えて、全然そうではないし、好きなことをたくさん持っていて魅力的なのに、器用なタイプではないことを自嘲して「自分なんて」と冷ややかに言う。
そういう歪(いびつ)さを知っているからこそ、ほって置けない。「This is M子」だ。
ー 冒頭の話しに戻る。
お酒(焼酎)が入っていたとはいえ、
強い反応にうまく返答できずにいると、
そこからは、完全にくだまきモードに突入した。
「あんなやさしい旦那さん、います?それだけで十分じゃないですか!!この前カラオケでも褒めてたじゃないですかー!”アイの声に合ってる”って!!!声に合ってるってなんですか、そんなこと考えたこともないですよ!そんなノロケ聞かされたら、こっちは歌うしかないじゃないですかー!!!」
もう、口を挟む隙もない。
たしかに、旦那と3人でカラオケに行った。でも、合ってる!合ってる!と旦那が言ってたのは完全にふざけて叫んでいただけで、まさかノロケと取られていたとは。っていうか、M子にも絶対叫んでいたはずだ。
いや、そんなの関係ねぇ。訂正してる場合じゃねぇ。
30代、シングルの闇をみたのではない。
ただ彼女の琴線にふれてしまっただけだ。
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というのも、じつはここ1年、彼女のお母さんが体調を崩しずっと入院生活を送っていた。そして、彼女も仕事を休職し、毎日病院通いと看病の日々を続けていてやっと最近仕事に戻ったところだった。
「やっぱり一人って結構大変だったんですよー。誰でもいいから、一緒にいて弱音を聞いて欲しいって。もう結婚したいです。」
M子は、先日そう言っていたのだ。
今日言っている「彼氏が欲しい」は、そういうことなのだ。
そこに、わたしはテキトーな相槌をうってしまった。
「今まで出来ないからこうなってるんじゃないですか!!!!そんなの何の気休めにもなんないんですよ!!」
わたしはこの感情を知っている。
子供がいる人からの「アイもそのうちできるよ!」だ。
「いや、出来ないからこうなってるんだよ。そんな根拠のない励まし、なんの気休めにもならないよ。」
声に出したことはないが、正直思ったことはある。
知ってるのに、やってしまった。
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人の悩みに大小なんてない。
ちょうど先週の「この世界の片隅に」でもそんなシーンがあったが、本当にそう思う。
それが「肌荒れ」であろうと、「恋愛」であろうと、「不妊」であろうと「仕事」であろうと。
そりゃあ、どこかで聞いたような悩みもあるかもしれない。
それでも誰一人として同じ事情では生きていない。
みんな同じ事情で生きていると思って接してくる人、そして、それを大きな声でわかったように言ってくる人が一番しんどい。なう。
不妊治療をするまでは、そこまで考えなかったけど、いまならわかる。少しは。
だから、猛省した。
アイスをおごった。
写真は、クールダウンしたM子と帰り道の公園でアイスを食べたところです。
不妊の経験、活かせよ。わたし。
#人生勉強中