『BUTTER』柚木麻子、『乳房のくにで』深沢潮:女の敵は女?

『マチネの終わりに』を読んで

ギター教室に通うと言い出し、

 

 『蜜蜂と遠雷』を読んで

ピアノを買うと言い出し、

 

『BUTTER』を読んで、

冷蔵庫のマーガリンを捨てた。

  

BUTTER

タイトルの通りバターについての記述がいっぱい出てくる。

↑装丁かわいい

 

もうね、エシレバターをあつあつご飯にのっけて醤油たらして食べたいし、ウエストのバターケーキ食べたいし、バター倍量で味噌ラーメンが食べたいのです。

読んだらみんなそうなるのです。

バターしか勝たん。

 

木嶋佳苗の話しなんですけどね、本は。

 

獄中の木嶋佳苗を取材しながら、どんどん彼女の影響を受けて変化していく女性記者が主人公。

食事も、容姿も、友人付き合いも。

 

あとの作者のインタビューを読むと、木嶋佳苗が食に対して異常な執着があったことは事実だけど、彼女のセリフや仕草、人物像はあくまでフィクションであるとのこと。

「ねえ、今、マーガリンっておっしゃった?」

この言葉からはじまるめくるめくバターの世界がもうすんごくて、「あんなまがいもの、トランス脂肪酸のかたまりよ。ご存知?」と続くのだけど、 主人公の女性記者になった気分でバターと木嶋佳苗に翻弄されながら読み進めること数日。

とりあえずマーガリンを捨てて、朝の超熟に余裕の顔でバターをのっけるようになった頃には、忘れかけてた木嶋佳苗の事件の全貌が気になってくる。本を読んでない時間はネット記事を読み漁り、獄中ブログまで読んだりして、頭の中はまさに木嶋佳苗一色。

 

忘れてたけど、死刑判決が出たあとに、週刊新潮の記者と獄中結婚してるんですよねー。

www.news-postseven.com

 

と、まあ彼女への興味は尽きないんですが、小説自体はちゃんと(?)この事件のルポにとどまらず自立したストーリーへと広がっていく。

あくまで題材であって、この事件そのものを描くことが本筋ではなかったのだなーと読み終えた今思う。最後までおもしろかった。

 

BUTTER(新潮文庫)

BUTTER(新潮文庫)

 

柚木麻子の作品といえば、女のドロドロ!みたいな勝手なイメージがあったのだけど、たぶんそれも間違っていたんだろうなー。

他のも読んでみたい。

 

『乳房のくにで』深沢 潮

もう一冊、これも最近読んだ。 

乳房のくにで

 

表紙から想像する”子と母”のストーリーはいろんな意味で裏切られる。

1ページ目からうっすらず〜っと不穏な空気が漂っていて、この話しどうなるんだろう.....が止まらず夜な夜な読み進めた。

母乳をあげながら、母乳ナニィの話しを読む日々。

 

 

色々すっとばして言うと、

『BUTTER』もこの本も、女の敵は女じゃない、ってことが書いてある (とわたしは受け取った)。

 

これには、母乳信仰のさいあくな義母が出てくるんだけど、結局その背景には男社会の呪いが強くあって、義母もその呪いに囚われた被害者といえる。相当なクソ義母だけど。

 

女vs女でもなくて、女vs男でもない。戦うべきはやっぱり古い社会、古い常識なんだよなーと思う。

 

だからこそ、女同士の足の引っ張り合いみたいな構図にエサを与えるような杉田議員の発言にはまじで毎回うんざりさせられる。そういう仕事を誰かから任されてんのか。

 

まあ杉田議員もだいぶ強めの呪いにかかっているので、哀れと思えなくもない...こともない。

 

乳房のくにで

乳房のくにで

 

#読書記録