2019年の読書始めは、吉田修一の『国宝』。
- 作者: 吉田 修一
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2018/09/07
- メディア: Kindle版
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歌舞伎を舞台に、芸事に魅せられた二人の男の生涯を描いた長編。
吉田修一が歌舞伎かぁ.....と少し意外に思ったのは、私の中で吉田修一といえば『怒り』や『悪人』、『パーク・ライフ』『路』『東京湾景』など現代小説のイメージが強かったからかもしれない。
これが浅田次郎や高橋克彦ならなんの違和感もないのだが、吉田修一が歌舞伎って、、晩年か!と心のなかでツッコミまずにはいられなかった。
そして、読み終えた今、
「晩年か!」
このツッコミはある意味間違ってなかったんじゃないかと思う。
それも、超・挑戦的な晩年へ突入した模様。
吉田修一、51歳。
や、晩年なんていうには早すぎるし失礼か。
作家としての円熟味を増し、さぁ【後期】へ突入するぞ、という狼煙が『国宝』で完全に上がっている。
え、めっちゃ熱い人じゃん
なにより、この『国宝』で吉田修一はめちゃくちゃ攻めてるのだ。
今さら歌舞伎という題材を選んだことも挑戦的だが、それ以上に、文体や書き方がぶっ飛んでる。時代は昭和〜平成。小気味好い長崎弁や関西弁のイキイキとした会話が軸に始まっていくのだが、作品の最初から最後までずっと歌舞伎独特のリズムが流れていて、視点がコロコロ変わったり、目の前の情景描写がとつぜん歌舞伎調になったり、講談のようなナレーションが入ったりと、もう、やりたい放題やっている。
ルール不問。
だってこんな自由な書き方、みたことない。
今までの作品とは全然ちがう。
っていうか、なんだこの文章!
才能溢れすぎだろ!
てか、もう充分なキャリアと評価を受けてる今、
なんて大胆な挑戦をするんだよ。
こ、....これが、吉田修一という作家か。... ゴクリ。
テンションそのままに書くなら、そんな感じだった。
これまで持っていた私の【吉田修一イメージ】
クールで、
なんか垢抜けてて、
都会的。
は、
なんだ。
人間臭くて、
垢抜けてて、
格好いいオッサンじゃないか。
に書き換えられた。
そうなってくると、そもそも何故クールで都会的って思ってたのか疑問だが、おそらく本の洒落た装丁のイメージが引っ張ってるような気がする。それに、なんかいつも小説のなかに流れてる空気が垢抜けてる印象もあるのだ。わたしだけ?
それは『国宝』にも感じた。泥臭いシーンを描いても、泥臭くないというか。吉田修一っぽいというか。(いい意味で)
まーとにかく、
『国宝』を読んで感じたことは、この一行。
ぼーっと生きてんじゃねえよ!
©️チコちゃん
何故なら、そこに作家・吉田修一(51)の攻めをみたからだ。
大した守るものもないくせに、びびってる場合じゃない。
いくつになっても挑み続ける姿はかっこいい。
で、......これは本の感想だろうか(笑)
追記:
歌舞伎について、まったく無知の私が読んでも面白かったのだから、歌舞伎ファンにはたまらないはずだ。
#読書 #記録 #吉田修一