2017年10月15日 消えない夜

ロンドンに暮らす友人Hとイタリアのプーリア州(かかとのヒール辺り)へ遊びに行き、LCCの深夜便でスタンステッド空港に戻ってきた夜のことだった。

夜中だというのに長蛇のUK BORDERを抜け、00:30発のナショナルエクスプレス(バス)で市内を目指す。

プーリア州では鉄道を乗り継ぎ、そこからロンドンまで3時間のフライト。昼間の活気が嘘みたいに味気なく殺伐とした深夜の空港を出発したバスの車内には、みんなの疲労が重く充満していた。窓の外はもちろん真っ暗。わたしも友人も薄く目を閉じ、硬いシートに体を預ける。

後ろの席では、一人の若い女がヒステリックに泣いて引きつけをおこしている。こんな時間に何があったんだ。

そして、空港を出発して10分。バスが高速にのったところで、すぐに渋滞につかまった。....事故だろうか?

 

30分経っても全く進まない。

渋滞を抜ける気配がない。

.... 嘘だろ、という車内の空気。みんなのイライラが募る。

 

その時、突然、

ドライバーが渋滞を外れるようにエイッと右折を決めた。

あまりの進まなさにルートを変えたんだな、やるじゃん!とそこからグイグイ進むことに車内の空気がほぐれていたのもつかの間、15分ほど走ると、、、、あれ?これ、空港じゃない??

戻ってきてない?

 

......どう考えても出発したときのラウンダバウトだ。そこから、信じられないことにまた同じ渋滞レーン(最後尾)につけて、まったく同じルートを再び行っている。

 

ザワつきはじめる車内。

ドライバーからはなんのアナウンスも無い。

 

すると、

後部座席のずっと泣いていた女が、

キレて運転席に詰め寄った。

 

女「Why did you back to the Airport? Why?!!!!」

運転手「Please sit down!! Call the police if you keep distracting me!! Please SIT DOWN!!!! 」

 

キレながら女、戻ってくる。

最悪の空気。夜中2時。

こっちはもう怒る気力も起きないほどに疲れていて、友人Hと二人のやりとりを白けた気持ちで傍観しながら、とにかく1分でも早く到着してくれと願うばかり。

結局、East Finchleyには予定より1時間半遅れて着いた。

 

ドライバーから「I'm so sorry for my panic, everyone」と最後にアナウンスが入る。

後続には、私たちより後に出発したバスがもう着いていて、自分たちの運の無さにため息が出る。

 

若い女は最後までヒステリックにキレていて、

警察に突き出すと言われたことを訴えると叫びながら運転手にiPhoneのカメラを向けていた。よく見ると、隣には彼氏らしき気弱そうな男も立っている。

そんなやりとりを横目に、他の乗客たちも無表情で、運転手にカメラを向け写真をとってバスを降りていく。

とうとう感情が壊れてしまったのだろう...... 運転手は、乗客たちのカメラに対して、ダブルピースしたり、大きく目を見開いたりしてコミカルな表情を向けだした。

そんな中、しれっと降りてナンバープレートを撮影していく人もいた。

「みんなコンプレインの為に撮ってるんだろうね」とつぶやく友人H。

 

そこから、UBERに乗りつぎ3時半、

ようやく家に到着。

 

全身に疲労がきた。

 

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日本だったらカメラを向けてたかな?

運転手はあの後どうなったんだろう。

みんなどんな言葉でコンプレインしたんだろうか。

あのヒステリック女の彼氏はどんな気持ちで横に立ってたんだろ。

 

ぜんぶ、どうでもいい。

それなのに、2年経っても、この夜の感情がふと蘇ってくることが何度もある。

 

消えてくれない。

ぜんぜん色褪せてくれない。

 

 

なぜ!笑

 

わたしの人生に於ける何か重要なメッセージでも見落としているんだろうか。

 

昨夜も思い出したから、書き残しておく。

 

f:id:suratanmen:20190224141802j:plain#ロンドン #旅 #記憶